糸・布

【広島・呉市】ものづくり産業の街から~ルームシューズ作家・KAOさん~

2.KAOさん(ルームシューズ作家)

「イングリモングリしよったですね」

岡山県出身、呉市在住のルームシューズ作家・KAOさんは、デザインから制作まで全ての工程を自身が手掛ける『A DEMAIN』を手にし、こう語りだした。

呉ルームシューズ作家

A DEMAINとは、フランス語で「また明日」を意味する言葉である。

「子供の頃って、友達と遊んだ帰りに必ず言ってましたよね、また明日って。いつから言わなくなったんだろ?でも口に出してみると良い言葉ですよね、また明日。わたし大好きなんです」

ルームシューズ作家とは、あまり聞きなれないジャンルの作家だ。
世の中には数多くの作家が存在する。近頃一番有名な作家といえば芥川賞作家・又吉直樹だが、小説家だけでなく劇作家、彫刻家、画家、漫画家などなど、様々なジャンルに色々な「作る人」がいる。
それにしてもルームシューズ作家とは…?

「珍しいですよね。でも東京にはいるんですよ。都会には案外いるのかな?呉では私ぐらいでしょうね」

呉ルームシューズ作家

ルームシューズ=家の中で履くスリッパの事だが、どうしてそこに着眼したのだろう?

「量販店などで売られている既製品には、自分の足にフィットするものがなかなか無かったんです。ようやく良いのが見つかったんですが、何年かして履きつぶしてしまって。ああ、せっかく良いルームシューズが見つかったのに…」

新しいものを買えばよいのでは?

「外から家に帰って先ずする事は、ルームシューズを履く事。冴えない一日だったとしても、切り替える事ができるんです。つまりルームシューズはシフトレバーの様なもの。お気に入りのルームシューズが履けなくなったのは残念でしたが、無いなら自分で作ろう!って考え直しました」

呉ルームシューズ作家

履きつぶしたルームシューズを分解し、構造の研究から始めたKAOさん。

「真っ直ぐ縫うだけならそれほど難しくはありませんが、カーブがちょっと大変ですね。一番慎重になる部分です。途中で止まったら段差ができますので、一気にいきます」

材料は岡山県の倉敷帆布を使用している。

「広島県民なら尾道帆布といきたいところですが、そこは生まれ育った岡山のものを…ってことで。でも、倉敷帆布は呉駅ビルのお店で購入しているんですよ」

岡山県出身のKAOさんは、結婚を機に呉市に移り住み、以来20数年が経つ。
「ルームシューズを作り始めたのは4~5年前ぐらいからです。最初の頃はイングリモングリしよったですね。試行錯誤というか、ああでもないこうでもないとか、そんな感じです」

ルームシューズを作り始める以前は、懸賞生活にハマった時期もあったという。

「仕事を辞めてぽっかり時間が空きました。子育てと家事はありますが、子どもたちも高校を卒業し、何もしない時間に自分が何者なのか?色々考えましたね」

その後ルームシューズを作り始めて2年後には、呉の老舗コーヒー店のギャラリーで個展を開くほどの量を制作した。新たな発表の場をと考えていた時に、行きつけのパン屋に貼られたチラシが目に入った。
それはSakkaya LIFEという、この4月にオープンしたばかりの雑貨屋のものだった。

「毎日買い物に行くスーパーの近くだから、ちょっと寄ってみたんです。そこで店主の若い女性に商品を置いてほしいと頼みました」

呉ルームシューズ作家

その時、店主の香川ももこさんから返された言葉は、予想外のものだったという。

「デザインが物足りないと指摘されました。そう言われてみれば、売り物にするならデザインも良くないといけない。あの時、あの指摘が無ければ…香川さんにはとても感謝しています」

フランスパンやクロワッサン、ジャムやナイフやフォーク…可愛らしいデザインとともにA DEMAINは進化を遂げた。

呉ルームシューズ作家

二足一組のルームシューズを制作するのに、4~5時間かかる。

「難しい事の方が好きですね。簡単だと飽きちゃうから。今はこれをやっている時が一番幸せ。おばあちゃんになっても続けていきたいです」

今後の目標は?と聞いてみたところ、「色々ありますよ」と前置きをしたうえで…

「いつかフェアトレードをやりたいんです。海外の色々な国の布を使って、もっと良いルームシューズを作りたい。娘が海外旅行好きなんで、手伝ってもらわなきゃ。目標というよりも夢、いや野望かな」

『つなぐ手に 海・技・人 が光るまち』
8年前、市制105周年記念に発表された、呉市のキャッチフレーズである。
このキャッチフレーズ、考案者は兵庫県神戸市の方だそうだ。

人口減と衰退を続ける呉市。
歴史と伝統は大事だが、他所からの変化・変革が必要な時代である事を象徴しているように感じる。
そうすれば街は、「光る」を超えて「輝く」。

KuratorとKreator
いずれにせよ、この街の路地裏で、目を輝かせる人たちがいるのは確かだ。

KAOさんのルームシューズはSakkaya LIFEで購入できます。
住所:呉市東中央2-5-6

Sakkaya LIFEブログ
Sakkaya LIFE facebook

(写真・文:山口みそひと)

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