粘土・磁器土

尾道市因島に移住した若き陶芸家の“モノづくりで大切にしていること”~広島の楽しい100人・吉野瞬さん~

尾道といえば昔から映画の街として有名で、最近はサイクリストからも人気が高い観光スポットになっていますが、その尾道市因島に住む若き陶芸家をご存知でしょうか?
広島で行われたトークライブイベント広島の楽しい100人の中から、
尾道市因島に移住し、地域の方々と触れ合いながら陶芸家として創作活動をしている吉野瞬さんをご紹介します。

※この記事は「広島の楽しい100人」の内容を再編集したものです。

尾道市-因島

陶芸の道に進むことを決めた高校時代から修行→独立へ

(司会)

続いての登壇者は、吉野瞬さんです。
吉野さんは広島市出身、高校時代に陶芸の現場に入ることを決意され、卒業と同時に栃木県の益子焼の窯元で8年間の修行を積まれました。
現在は瀬戸内海の海に囲まれた尾道市因島を拠点に、創作活動を続けておられます。
2013年9月に金属作家の向井秀史さん、デザイナーの岡野琉美さんと共同運営をしているART GALLERY シゲイノイエをオープン。
今日はその創作過程と、美しい因島の毎日を語って下さると伺っております。それでは吉野さんお願いします。

(会場拍手)

みなさんこんばんは。僕は普段はろくろを使って土と対話をする陶芸という仕事をしています。皆さんの前でお話をすることは、なかなかない機会ですが、今日は温かい気持ちで聞いて頂ければと思います。

先程僕の自己紹介をして頂きましたが、僕は広島県広島市で生まれて高校は基町高校を卒業しました。大学進学も考えましたが、僕は「手に職をつけたい!何かモノを作って、人の心に訴えかける作品が作りたい!」と思い、陶芸という道を選びました。

陶芸と言っても、大学に行ったり、専門学校に行ったりと他の道もありますが、僕は18歳で栃木県の益子焼の窯元である佐久間藤太郎窯、四代目佐久間藤也氏に弟子入りをして、8年間修行させて頂きました。

こちらが登り窯という窯で大体三日間くらい窯を焚きます。窯焚きと言いましても、今はガスとか電気とかいろいろとあって、これは薪を使います。大体72時間窯にへばりついて、職人さんや作家の皆さんと窯を焚いているんですけど、僕は下っ端だったんでずっと窯にはりついている日々でした。

栃木県で8年間作品を作る勉強をして、それから独立という道を進みました。
どこで独立しようかと思っていた時に、「やはり生まれ育った広島で独立をしたい!」と思いました。独立するにあたって、まず8年の集大成を見せようと思い、独立展という形で八丁堀にある「ギャラリーG」というギャラリーでやらせて頂きました。

個展をやるのは初めてで、普通の陶芸家の方は大体200~300点くらい出すんですけど、僕の場合は先生が「退職金が出せないから好きなだけ窯を焚け!」ということで、窯を焼き上げまして作品を1000点以上作りました。1000点作ると先生がビックリして「燃料代を返せ!」と言ったんですけど。(笑)そういう形で僕と作品を広島に送り出してくれました。

尾道市-因島

尾道市・因島で独立を決めたキッカケ

僕の作品が世に出るのも初めてで本当に不安でしたが、おかげ様で全て完売しました。8年間、本当に貧乏で貧乏で仕方が無かったですけど、この個展で独立の資金ができました。僕は個展が目標ではなく、広島で独立する事が目標だったので、広島に帰って独立する場所を探しに行きました。

その時に福富町という所での独立がほぼ決まっていましたが、個展の最終日に因島から商工会議所の若い方が来て、「是非、因島に来てくれないか」と言われ、今、島から若い人が出て行って何もないけど本当に島は良いところだよとおっしゃってくれて、個展が終わった後に因島に観光がてら行くことになりました。

島に行くという感覚がとても新鮮で、橋をわたるときに青い海がバーっと広がって、橋がドーンとあって、「これから島に行くんだ!」と思っただけでものすごくテンションが上がってきて、福富町というところも素晴らしかったんですけども、島に行った瞬間に「この島で焼き物をやってみたい!」と思いました。

今は因島で活動をしていて、いろんな方に「何で何もない島に行ったの?」と聞かれるんですけども、本当に直感で「島に住みたい!ここで陶芸をやってみたい!」と思いました。

僕はスタジオ・ジブリが大好きで、魔女の宅急便という作品の冒頭のシーンでキキがほうきにまたがって、「やさしさにつつまれたなら」が流れて仕事先を見つけにいくシーンがあります。その時にすごい雨が振って汽車の荷台に滑りこんで、翌朝すごい景色が広がって「私この街にする!」と言った時の気持ちに近かったです。

僕が住んでいる因島には時計台も、オソノさんというぽっちゃりした人がやっているパン屋も無いですけど、真っ白な灯台があって、店はすごく汚いけど美味しい魚を出してくれるおばちゃんがいたり、トンボというボーダーの服を来たバカヤローもいなかったですけど、ストライプのボーダーの陶芸を作るバカヤローがこの島にいても良いんじゃないかと思いまして、因島で活動することを決めました。

島には誰も知り合いがいなかったので、どうやって家を探そうかと思った時に、地元の大工さんを紹介してもらいました。そこで大工さんが「物件を見つけてきてやる!」と言ってくれて、その一週間後に連絡があって「物件が見つかったぞ!タダでええとこばっかりじゃー!」と言って26件も探してくれていました。

そのうち玄関へ入って床が抜けた家が5件。どーしたもんかと思ったんですけど、その中の一軒で海沿いにある古い家があって、僕はここに住みたいなと思って結局そこで作品を作ることになるんですけど、ここもホント酷くて入った瞬間にこの辺のフナムシは全部ココで死ぬんじゃないか?と思うほどの塊があったり。
「大家さん、お風呂はどこですか?」と聞いて見てみると、浴槽の中には木が生えていました。お風呂に木が生えているのを初めて見てそれを大工さんに説明したところ、「ワシがなんとかしちゃるけん!」と言って一緒に改装を手伝ってくれてアトリエが完成しました。

因島に移住するまでや、因島での生活で様々なご縁を感じたこともあり、人のご縁を感じた会社を作ろうと思い「工房一会」という屋号で工房をスタートしました。
何か島のものを使って看板を作りたいと思い、因島は造船業が盛んなので船の廃品で看板を作ってもらいました。

島での創作活動や地域の方々との交流

陶芸家なのに作品のことを全然話して無かったんですけど、こういう感じで陶芸を作っています。僕が今メインでやっているのは真ん中のストライプの器で民芸品なんですけど、若い方にも陶器に親しんでもらいたい、そして、自分は作品にサインを書かないので作品を見た瞬間あの人が作ったんだなというモノを作りたくてこういった作品を作っています。

尾道市-因島

因島にはたくさん砂浜があるんですけど、あんまりみんな海に行かないんですよね。何でかなー?と思うんですけど。
僕は今「アーティスト・イン・レジデンス」という活動をしておりまして、簡単に言うとアーティストが島に滞在しながらアート制作するという活動です。僕の幼なじみで東京で活動している子も2ヶ月~3ヶ月に一回アトリエに来て作品を作っています。

尾道市-因島

あと地元の子どもたちと触れ合う活動をしています。小学校に上る前の子どもたちと陶芸教室をしたり、「先生ー!先生ー!」と寄ってきて本当に島の子どもたちが可愛くて。陶芸というよりも泥遊びに近いんですけど、島の子どもたちと触れ合う機会を作ってもらっています。他には地元のお祭に参加したり、近くの島に行ってワークショップもしています。

今日はシゲイノイエとして呼ばれましたが、アトリエとは別のギャラリーとしてシゲイノイエをスタートさせました。柑橘農家さんの納屋をリノベーションして、島で活動している人を集めて島から何か発信していこう!ということで3人が集まって、今いろんな活動をこのギャラリーで行っています。

掃除しながら自分で足場を組んで、造船所の社長からペンキをもらって自分たちで塗ったりしてリノベーションしました。一階は僕のアトリエと他のデザイナーさんの作業スペース、二階がギャラリースペースになっています。

ギャラリーというと島の人はすごく近寄りがたいんですよね。もっといろんな人が来てもらえるような仕組みを作ろうと思い、まず第一回目に企画したのはJAZZライブです。
JAZZライブといっても島の人はピンと来なかったんですけど、因島には美味しい魚や野菜があってそれを地元の人はなかなか食べてない。地元の食材を使って、隣の島の料理研究家の先生に料理をしてもらって地元の食材を食べながらJAZZが聴けるというイベントをやって、小さい島の小さいギャラリーに一日40人~60人集まってくれます。

あとは「シゲイノヨセ」と言いまして、僕は落語が大好きなんですけど、知り合いの落語家さんを呼んで寄席をやったり。

地元の中学校の職場体験なども受け入れていて、モノを作る現場を見せる機会がないということで、校長先生から依頼されて受け入れています。

これは「ツキアカリ」というイベントなんですけど、満月の日にイベントをやろう!ということで、今までカフェをやりたいとか、雑貨屋さんをやりたいとか思っても最初はやった事がないのでなかなか難しい。場所を貸すので自由に使って下さいということで、満月の日に「ツキアカリ実験室」というイベントをやっております。

尾道市-因島

モノづくりをする上で大切にしていること

これから何をしていきたいかということですが、もちろん陶芸は僕の仕事なんですけど、僕が作った器を使ったカフェを今度オープンする予定です。

僕がモノを作るにあたって、一つだけテーマに置いていることがあって、モノをつくる、自然に寄り添って暮らす、島で暮らすということは、物語がその後にくっついてきたら良いなと思っています。何かやることには必ず物語が付いてくる、ということを常日頃から考えております。

僕が作ったモノは修行時代から、そして島で作り出されたものはその背景にある物語を買って頂いたお客様に感じて欲しいです。島に住んで、島の仲間とギャラリーを作って、島の方々と交流して協力して、消防団に入ったり老人会の方と餅つきをやったりして、地元の運動会に出たり漁師さんと漁に出たりいろんなことをやったんですけど、その後も必ず物語になると僕は思っています。

今日もこんな素敵な会に呼んで頂いて感謝しております。僕もこんなにたくさんの人の前でお話ができたことを嬉しく思っています。
短い時間でしたが、今日は僕の人生の中で素敵な1ページになると思います。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

▽動画はこちらから

~参照~
ART GALLERY シゲイノイエ
広島の楽しい100人

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