紙・ダンボール

ご縁の国・島根県の“1000年保つ”和紙婚姻届を作りました

「婚姻届提出」という人生の一大イベントをもっとメモリアルなものにしたい、そして最終的には島根への観光者を増やしたい…

そんな目標を掲げて、『和紙で作った”1000年保つ”婚姻届』を作成しました。

婚姻届

素材に用いた和紙は、ユネスコ無形文化遺産にも登録された石州半紙の技術で作られた「石州和紙」を、
書式の印刷には、慶應大学日吉キャンパスにあるKEIO EDGE LABさんのレーザ゙ー加工機を利用させていただきました。

作成した『和紙婚姻届』の特徴をまとめるとこんな感じです。

  • 素材の紙には、島根県浜田市にある和紙工房で作られている『石州和紙』を使用。(この和紙を作る技術はユネスコ無形文化遺産にも登録され、作られる和紙は“1000年保つ”と言われるほど強度が高い)

  • 和紙婚姻届の上にカーボン紙を重ね、さらにその上に役所に提出する用の婚姻届を重ねて書く。つまり、書いた文字が和紙婚姻届に転写され、和紙婚姻届は記念に手元に残せる。一番上に重ねて書いた提出用の婚姻届は通常通り役所に提出する。

  • 和紙婚姻届の書式はレーザー加工機で作成。焼きこんだ文字が和紙の雰囲気とマッチして良い感じ。劣化せずずっと残る。

意外に自由な「婚姻届」

婚姻届については以前からいろいろ調べていたので、

  • 婚姻届は最低限のフォーマットさえ守ればデザインを施してもok(完全自作もok)
  • 自身の住民票がある役所以外で得た婚姻届でも提出ok(しかも提出する窓口も日本全国どこでもok)

ということを知っていました。

この話をすると、「住んでる場所以外でも婚姻届提出できるんだ!」「いろいろデザインしても良いんだ!」と驚かれる事も少なくありません。私もその豆知識を知った時はびっくりしました。

そしてなんと、最近ではそんな婚姻届の特徴を活かして、さまざまな役場がユニークな「ご当地婚姻届」を作成し配布しています。また、民間企業による『デザインされた婚姻届の販売』なんかも行われていて、この業界(?)はにわかに話題になっています。

今回作った島根の和紙婚姻届も、ゆくゆくは「島根県限定販売」にすることで、「島根で婚姻届を手に入れて提出するついでに県内を観光していく」、というような県外観光客を誘致するための”観光の目玉”の一つになったらいいなと思っています。

一生に一度のものだから、徹底的にこだわりたい

「婚姻届を自由にデザインして作れる」なら、やはり凝って作ったものを「一生残したい」という欲が出ます。

しかも、せっかく「凝って作る」なら完全にオリジナルなもの、世界に一つの自分たちだけの婚姻届を作りたい、とますます欲は膨らむばかり…

そこでまず思いついたのは、婚姻届の素材となる『紙』からこだわることでした。

そんな話をいろいろな人にしていると、幸運なことに、1300年にも渡って続く伝統的な手漉き和紙である「石州和紙」を生産されている島根県浜田市の職人の方とお会いできるご縁が得られました。

なんと、その石州和紙の技術は「ユネスコ無形文化遺産」にも登録されています。お願いして和紙工房見学をさせていただいたり、和紙文化にまつわるいろいろなお話をうかがう中で「絶対、石州和紙を使いたい!」と強く思うようになり、いろいろ相談させていただいた上でこちらの和紙を婚姻届作成に利用させていただくことになりました。

この石州和紙は、「大阪商人が石州半紙を帳簿に用い、火災のときいち早く井戸に投げ込んで保存を図った」という話が残っているほど耐久性に優れ、また1000年前の文献に用いられたものが状態の良いまま発見されたほど経年劣化にも強いそうです。「ずっと残す」には間違いなくこれ以上ない素材です。

西田和紙工房
△均一に紙を”漉く”工程。写真は西田和紙工房の継承者、西田勝さん


△紙は一枚ずつ漉く。この技術が1300年も途絶えること無く続いてきたことが驚異的ですね…


△漉いた紙がどんどん重ねられていく。アオイトロロという繊維を繋ぐ”のり”の役割をする植物抽出液のお陰で一枚づつ綺麗に剥がれる。

古き良きものにこそ、最新の道具を使ってみたい

最高の素材も手に入り、あとは実際にこの和紙を「婚姻届」に仕立てていくのみです。

和紙に所定の婚姻届の書式を印刷するのには最新のレーザー加工機を使いました(書式データはAdobe Illustratorで作成しました。まさか婚姻届をイラレで自作する日が来るなんて思っても見なかった…)。

データ作成
△平日深夜に婚姻届をトレースする作業。意外にツライ。

実は、通常の紙のように和紙にもインクジェットプリントで綺麗に印刷できるそうです。ただ、個人的にはせっかくの最高の紙に普通にプリント印刷するのも面白くないな、となんとなく感じていました。

何か良い方法は・・・と考え思い出したのが、以前一度だけ渋谷のFabCafeで利用したレーザー加工機です。

その時は、マカロンの表面に焦げ目を入れるように文字や絵を書く体験をしたのですが、それを和紙でもできないかと考えトライしてみることにしました。

マカロンfab
△マカロンの表面にレーザー加工機で文字や絵が書ける

完全に漂白された白ではない、ややクリームががった優しい色味の和紙に、レーザー加工の焦げ跡がすごく合うと直感的に感じました。しかも、レーザー加工で文字を「焼きこむ」ので文字が経年劣化すること無く残ります。

和紙にレーザー加工機を使いたい理由は他にもあります。

よく言われる話ではありますが、何かを作る時に、レガシーでアナログで属人的過ぎるからという理由で排除するだけでも、最先端でデジタルでソーシャルだからという理由で歓迎するだけでもダメで、古いものと新しいもの、それらを組み合わせ、調度良いバランスで交じり合った時に、想像していたよりも素敵なものが出来ると信じています。

むしろ、ほど良いバランスを模索し、相乗効果を生むように可能性を拡張することが、新しいものが目まぐるしく登場し、すべてのものがすぐに”古く”なり淘汰される今の時代にこそ重要だと思っています。私は古くからあるものにこそ、新しいものをぶつけてみたいという気持ちが常にあり、それを何より楽しんでいます。

レーザー加工機
△「trotec speedy300」というレーザー加工機で和紙表面に彫刻する。一枚印刷するのにだいたい30分かかる

レーザー加工機の利用には、これまた偶然の繋がりから、”KEIO EDGE LAB“という慶應大学日吉キャンパスの中に設置されたファブスペースを利用させていただきました。

この機器の使われ方は、厚めの木材やプラスチック板などの立体的なモノに、デジタルデータで指定した通りにレーザーで切り抜いて(cuttingして)物を作る、というものです。
材料を切り抜く以外には、レーザーの出力を調節することで、表面を焼きながら削る”彫刻(curving)”も可能です。

もちろん、和紙は切り抜いてしまうと使えなくなってしまうので、切り抜かないまでもきちんと文字が残る程度にレーザー加工機の出力を調節する必要があり、それが大変でした…

そんなこんなで何週間かEDGE LABに通わせていただき、いろいろな人の助けを借りてトライ&エラーを繰り返した結果出来たのがこの『複写式の和紙婚姻届』です。

和紙婚姻届_全体
△作成した和紙婚姻届。注意書き部分などは削除し、空きスペースに写真などを貼れるようにした。

和紙婚姻届_カーボン紙
△和紙の婚姻届の上に、市販されている普通のカーボン紙を重ねる。

和紙婚姻届_重ね
△さらにその上に役場提出用の婚姻届を重ね、通常通りボールペンで記入(役場提出用の婚姻届も、和紙婚姻届にピッタリ重なるように自作

和紙婚姻届_複写
△カーボン紙を取ると…ちゃんと複写されてる! (手漉き和紙っぽく、和紙の左端には敢えて”耳”の部分を残してみました)

地域観光に繋がる特別なものへ

実は、今回作成した「手元に残る婚姻届」のアイデアは2年ほど前からずっと持っていました

最近になって、私の周りでも結婚する人が多くなり、その報告をSNS上で聞く度に「やはりこういう婚姻届があると良いなぁ」という気持ちが大きくなり、温めていたアイデアを遂に実行した、という感じです。

冒頭にも書きましたが、この「手元に残る婚姻届」のアイデアで、最終的には「島根県への観光者を増やす」ことに貢献したいと思っています。

知らない方も多いと思いますが、島根県には出雲大社があったりして、“ご縁の国”として「縁結び」を県の1つの大きなブランディングキーワードにしています。

ご縁の国しまね
△”ご縁の国しまね”のポスター。現在はEXILEがイメージキャラクターを務めている。

他人同士だった人たちが恋人になり、婚姻届を出す(=家族になる)ということはまさに『人の縁』であり、島根県でこの特別な婚姻届を扱うことは非常に親和性が高いと感じています。

さらにその婚姻届の素材に、地元が誇る手漉き和紙を使っていることも「島根の魅力発信」に繋がるはずです。
旅行者のカップルに「紙を漉く」ところから行ってもらい、本当の意味で「自分たちだけの婚姻届」を作成してもらうのも素敵かもしれません。

近い将来、「婚姻届を出すなら島根県へ!」というフレーズで、”新婚旅行”ならぬ”婚姻旅行”が定着し、島根県への旅行者が増えることで多くの方にこの土地の魅力が伝わればいいなと妄想しています。

(写真・文 吉田勇太)
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